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予防歯科歯周病

毎日磨いているのにどうして歯石がつくの?その理由と、歯科衛生士が伝えるセルフケア

「毎日朝・昼・晩と欠かさずハブラシを動かしているのに、歯医者さんに行くと『あ、ちょっと歯石が溜まっていますね』と言われてしまう……」
そんな経験はありませんか?「あんなに一生懸命がんばっているのに、どうして!?」と、ショックな気持ちになりますよね。自分のケアが全否定されたように感じて、モチベーションが下がってしまう方も少なくありません。


実は、「毎日歯磨きをしていること」と「お口の中の汚れが正しく落ちていること」の間には、自分では気づきにくい大きなギャップがあるのです。


今回は、毎日お手入れをがんばっているあなたを決して責めることなく、なぜ歯石がついてしまうのかという「謎」を解き明かし、明日からすぐに実践できる予防法を解説します!

1、そもそも「歯石」の正体ってなに?
多くの人が誤解しがちですが、歯石は「食べかすがそのまま固まったもの」ではありません。歯石ができるまでには、お口の中で次のようなステップが踏まれています。

ステップ①:細菌の塊「歯垢(プラーク)」の発生
ご飯を食べた後、歯の表面に残った栄養分を餌にして、お口の中の細菌が爆発的に増殖します。これが「歯垢(プラーク)」です。ネバネバとした白い苔のようなもので、実はこのわずか1mgの中に、1億〜10億個もの細菌がひしめき合っています。この段階ではまだ柔らかく、ハブラシで落とすことができます。


ステップ②:わずか2〜3日で「石」に変化
この歯垢をハブラシで落としきれずに放置してしまうと、大変なことが起こります。唾液に含まれるカルシウムやリンといったミネラル成分が歯垢に染み込み、文字通り石のようにカチカチに硬化してしまうのです。この現象を「石灰化(せっかいか)」と呼び、歯垢がついてから歯石に変わるまでは、わずか2〜3日しかかかりません。

ここが運命の分かれ道です。

一度「歯石」に変化してしまうと、強固に歯の表面にこびりつきます。こうなると、通常のハブラシでいくら力任せにゴシゴシこすっても、絶対に落とすことはできません。

2、毎日磨いているのに歯石がつく「4つの原因」
「じゃあ、私は毎日磨いているのに、どうして2〜3日も放置したことになっているの?」その疑問にお答えするため、原因を4つに分解して解説します。


原因①:「磨いている」けれど「磨けていない」
一番多いのが、ハブラシを動かして「磨いた気」になっているものの、実際には毛先が肝心な場所に届いていないケースです。ハブラシの毛先が当たっていなければ、何分磨いても汚れはそのまま残り、2〜3日で歯石へと育ってしまいます。自己流のブラッシングでは、どうしても手の動きのクセで同じ場所ばかりを磨き、苦手な場所を素通りしてしまいがちなのです。


原因②:磨き残しやすい「歯石の特等席」がある
お口の中には、構造上どうしても歯石がつきやすい「超危険地帯」が存在します。それは、唾液が湧き出る出口(唾液腺)のすぐ近くです。

・下の前歯の裏側(舌の下にある唾液腺の真ん前)
・上の奥歯の頬っぺた側(上の奥歯の粘膜にある唾液腺の真ん前)


この2箇所は、常に新鮮な唾液のミネラル成分にさらされているため、少しでも歯垢が残っていると、ハイスピードで歯石化してしまいます。


原因③:唾液の成分(体質)による影響
「友達は全然歯を磨かないのに歯石がつかないのに、どうして自分ばかり……」と悩む方もいます。実は、唾液の性質には個人差があります。


唾液が「アルカリ性」に傾きやすい人や、唾液中のカルシウムなどのミネラル成分が豊富な人は、お口の中の細菌を中和する能力(殺菌・保護作用)が高い反面、歯垢を歯石に変えるスピードが人一倍早いという体質的な特徴を持っています。裏を返せば「虫歯になりにくい強い歯」の持ち主でもあるのですが、その分、歯石には気を配る必要があります。


原因④:お口の乾燥(ドライマウス)
現代人に増えているのが、ストレスや口呼吸、スマートフォンの見すぎによる「お口の乾燥」です。唾液の分泌量が減って口が乾くと、唾液による「お口の汚れを洗い流す自浄作用」が低下します。その結果、歯垢が濃縮されたような状態になり、歯の表面にこびりつきやすくなって歯石化を加速させてしまうのです。

3、今日からできる!歯石をブロックする「正しい磨き方」
毎日の頑張りを無駄にしないために、ハブラシの当て方を少しだけアップデートしましょう。


狙うべきは「歯と歯茎の境目」


歯の平らな表面は、普通に磨くだけでも汚れが落ちます。意識して狙うべきは、歯と歯茎の間にある「歯肉溝(しにくこう)」と呼ばれる1〜2mmの隙間です。ここに45度の角度でハブラシの毛先を優しく差し込むように当て、細かく小刻みに(1本ずつ振動させるように)動かすのがプロ推奨の磨き方です。
ハブラシは鉛筆を持つように「ペングリップ」で軽く持ち、毛先が広がらない程度の優しい力(150〜200g程度:爪の生え際を押して少し白くなるくらいの強さ)で磨きましょう。

歯石にまつわる疑問を一挙解決!Q&A
みなさんからよく寄せられる疑問や不安に、分かりやすくお答えします。


Q1. 歯石がつくと、体にどんな悪い影響があるの?


A. 歯周病菌の温床になり、口臭や、重度の歯周病により将来的に歯が抜ける原因になります。
歯石そのものが悪さをするというより、その「構造」が問題です。歯石の表面は軽石のようにザラザラしており、そこは細菌(新たな歯垢)にとって絶好の隠れ家になります。歯石の上にさらに細菌がこびりつき、毒素を出し続けることで、歯茎が赤く腫れる「歯周病」が進行します。
歯周病が進むと、歯を支えている骨がジワジワと溶かされ、最終的には歯がグラグラになって抜けてしまいます。また、細菌が発するガスによって、周囲に気づかれるほどの強い口臭の原因にもなります。


Q2. 市販のグッズを使って、自分でガリガリ取ってもいい?


A. 絶対にNGです!大きなリスクしかありません。
ネット通販などで、プロが使うような金属製のスケーラー(歯石を削る器具)が簡単に手に入る時代ですが、セルフケアでの使用は絶対にやめてください。
歯石除去は、歯科衛生士に任せましょう。


Q3. 歯石をつけないための「最強のセルフケア」は?


A. 「デンタルフロス(糸ようじ)」や「歯間ブラシ」を夜の歯磨きに1回プラスすることです!
実は、どんなにハブラシの技術が高い人でも、ハブラシ1本だけで落とせるお口の汚れは約60%が限界だと言われています。残りの40%は、歯と歯がピタッと合わさった隙間に残っています。ここを放置するから歯石になるのです。
しかし、ハブラシの後にデンタルフロスや歯間ブラシを併用するだけで、汚れの除去率は約80%以上にまで跳ね上がります。特に夜寝ている間は、唾液の分泌が減って細菌が爆発的に増えるため、「夜寝る前のフロス」を習慣にするのが最も効果的で最強の予防策です。


Q4. 歯磨き粉選びで、歯石を予防できるものはある?


A. 「ピロリン酸ナトリウム」や「ポリリン酸ナトリウム」と書かれたものを選びましょう。
これらは成分のハたらきで、歯垢がカルシウムと結びつく(石灰化すること)のをブロックし、歯石が歯に沈着するのを防いでくれる成分です。また、殺菌成分(IPMPやCPCなど)が入ったものを選ぶと、そもそも原因となる歯垢の増殖を抑えることができます。


Q5. 子供の歯にも歯石はつくの?


A. つきます。特に小学生くらいの「唾液の分泌が盛んな時期」は要注意です。
子供は大人に比べて唾液の分泌量が多く、お口の中がアルカリ性に保たれやすいため、磨き残しがあるとあっという間に歯石になります。子供の場合は、下の前歯の裏側に加えて、唾液腺に近い「上の奥歯の外側」によく見られます。子供の歯石も放置すると歯茎の炎症(痛みのない歯肉炎)を引き起こすため、仕上げ磨きの際にチェックしてあげてください。


Q6. どのくらいの頻度で歯医者さんに行けばいい?


A. 一般的には3ヶ月に1回の定期検診がベストです。(定期検診の頻度についてはお口の中の状態によって個人差があります。)
人間である以上、100%完璧にブラッシングすることは不可能です。どうしても残ってしまった磨き残しが歯石に変わったら、歯医者さんで専用の機械を使って、除去してもらいましょう。